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羅小黒戦記

映画を観てきました。(→公式サイト


『羅小黒戦記』(ロシャオヘイセンキ) 予告編

友人が誘ってくれるまでまったく存在を知らなかった中国のアニメですが、静かに人気になっているようです。
わたしが行った阿佐ヶ谷の劇場では、去年の秋からずっとかかってるらしい。ロングラン!

あらすじはこんな感じです。

黒猫の妖精・小黒(シャオヘイ)は開発によって故郷の森を追われ、人間社会の片隅で放浪生活を送っていた。そんな小黒を助けてくれたのが、同族の妖精である風息(フーシー)で、その仲間である洛竹(ロジュ)、虚淮(シューファイ)、天虎(テンフー)らにも受け容れられ、安息の地で暮らせるかに思えた。
そこを急襲したのが、「館」と呼ばれる組織の執行人である無限(ムゲン)。風息らとはぐれてしまった小黒は無限に館へと連行されるが、道中で無限は不器用ながら小黒の面倒をみてくれ、未熟な術の手ほどきもしてくれる。
まだ子供の小黒には、風息たちと無限たちと、どちらの陣営が善であるのか、どちらを信用すべきなのかわからない。そして小黒の前に風息が再び現れるとき、事態は急転直下の展開を迎える。


一見するとこの作品は自然破壊批判や文明批評の物語のようでもあります。ですが、「館」が現代社会と妖精との融和・調整をはかる機関であることを考えると、どちらかといえば民族紛争の話にみえるなーと思いながら観ていました。先住民族を逐ってしまった現代文明が、細々と生き残っている彼らと共存しうるか、というような。
だから「館」は妖精たちに仕事や住居を斡旋したり、新しいライフスタイルを提案したり、そのどちらにもなじまない場合は「館」本部に住まわせたりしています。そうした措置を手広く展開していながら、どうしても管理指向が強いために根本的に相いれない妖精たちもいる、という状況もまたリアルだなあ。

背景美術は濃密で美しく、凝りすぎずシンプルで親しみやすいデザインのキャラはぬるっぬる動き、映像表現としてのクオリティはとても高かったです。小黒は複数形態に変身するのですが、どのかたちでも気持ちよくかわいらしく動いていました。
けれど、全体的な観ごこちは、良くも悪くもすごーく同人的でした。
背景とキャラの動きの合わせ方、BGMの入るテンポ、カメラワークなど、演出のあちこちにものすごく濃厚なジブリ臭を感じます。初撃からずっとトップスピードで外連みの強いバトルには、猛烈なドラゴンボール感を感じます。ほかにも、スパイダーマンであったりシン・ゴジラであったりAKIRAであったり、たぶん作り手たちが魅了されたことのある映像をすべてブチ込んだんだろうなーと。そんな丸呑み(=愛の強さ)と未消化(=表現の拙さ)の感覚は、じつに同人的だなぁ。

同人≒素人感を生み出していた要素はもうひとつあって、それは残念きわまるクオリティの字幕です。これは日本側の責任だろうけど…。
1秒4文字原則の甚だしい逸脱、大量の誤字脱字、消しそびれた幽霊ルビ、助詞の誤り、劇中専門用語の練り込み不足。うっぐうううう、初校レベルのものをマスターにすんなあああああ! これはひどいぜ。プロじゃなくて有志が訳してるんでしょうか?? 

で、物語上で謎なところがちょいちょいあったのですが…これがシナリオと字幕のどちらの不備に由来するのかよくわからないのです。困ったな。
以下ネタバレつつ語りますが、そこそこ辛口になりますです。


わたしは観ている最中から、イマイチ観客の腰の据えどころに困る作劇だなーというような、ふんわりした不満を抱いていました。きっとお話の主眼は、幼い小黒が親しく接する人々の善悪を決めかねて揺れ動くところ…なんだと思いますが、それを観客が追体験というか共有するには、どうにも描写がハンパというか演出のしっくりこなさを感じます。

無限は旅の道連れだったので、どうも第一印象の冷酷な執行人ってだけのパーソナリティじゃないらしいぞ、なんかこの人じつはいい人なのでは、といった感情は自然に湧いてくるのですが…。風息は最初の「ここがおまえのおうちだ」の思い出ひとつでひっぱりすぎかな。小黒にとって超重大な印象だったのはわかってはいるのですが、風息ももう少しだけ両義的にミステリアスに描いてほしかった感じはあります。あるいは、冒頭で小黒を襲う人間たちが術で洗脳されるさまを入れることで、観客にだけこっそり情報を開示しておくとか。
無限と風息、どちらに肩入れすべきかわからず、そのわからなさこそを味わってほしいというほどの演出の強度もないので、物語に体重を預けづらいのです。

で、無限による小黒連行と道中のあれこれ、風息サイドの展開、館の面々も加わった展開…と点描されていくけれど、なぜだか各エピソードがバラバラに感じられて、物語全体を貫く感情の流れが設定されていないように思えてうまくノれません。なんでなのかなあ…?

以下は雑感を箇条書きで。

・人名をカタカナ表記するとまったくイメージが定着しないので困る。我らは漢字の国の人じゃまいか。
・小黒のちっこい分身的なアレ、けっきょくなんだったの? ラストバトルでは座標固定的な超重要な役割を果たしていたように見えたけど、説明がなさすぎてサッパリわからん。
・戸外の卓に包子の蒸籠や箸が散らばってるさまがすっごく中国。草木の色味は日本と共通していたけど、枝ぶりや空間に異国感を感じて面白かった。
・木性や金性など五行の性質と、空間を操るというユニークスキルとがともに「属性」と訳されていたので呑み込みづらかった。己界とか領界とかも、わかるようなわからんような。
・「領界内部はマスターの思うがまま」って設定からすると、ラストバトルは物理じゃなくて概念書き換えサイコバトルになるのがスジじゃなかったのだろか。風息と小黒の優先権争いもわかりづらかったし。
・道服の人がうろついてるのって中国では普通なの??
・友人はあの子が哪吒太子だって認識できてなかった。日本人にはハードル高いかも。
・風息の変じた巨樹について、「伐採されちゃうよ」「公園になるかも」ってやりとりがなされるのはよかったな。
・洛竹以下の仲間たちは投獄されただけで、描写的アフターケアがないのが不満。「おにく」「おさけ」しか台詞がない天虎めっちゃ好きだったのにー。
・無限はカッコよかった。ああいった沈着系おちゃめキャラって、カンフー映画でよく見かけるよ…! だから「師父」のひとことがカタルシスになる展開はしっくりきて気持ちよかったな。

うーん。ヴィジュアルはすばらしかったけど、ドラマのエンジン機構に重大な欠落があるようで、わたしにはもうひとつ刺さらなかった。でもその欠落がなんなのかは、自分でもちゃんと把握しきれていないのでちょっと保留。
そんな映画でした!
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