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物語と音楽を偏愛しています

『妖精のおしり』と、日野雄飛の紙の本ぜんぶ

作家買いしている日野雄飛の新刊『妖精のおしり』を読んだら、インパクトのあるタイトルおよびドギツい表紙とはうらはらに、かなりシリアスで屈折して詩情にみちた内容で、ものすごく面白かった。そのいっぽうで、外装のイメージそのままのエロもどっさりで、とんでもなく絵が上手いのもいつもどおりだ。あいかわらずサービス精神にあふれつつも描きたいものを描いている、ほんとに骨のある作家なんだなぁとつくづく感じ入ってしまった。
で、これを機にこの人の作品を一気に読み返してみたところ…

!?

こんなに良かったっけ…?? いや、全部持ってるぐらいだからもちろん前から好きだったんだけど。
毎回趣向がめっちゃディープなのは言わずもがなとして、感想や判断を保留せざるをえなかったりとわりと余韻があるものも多いし、最近では社会的な題材も増えてるぞ…。と、マジでいまさらながらびっくりしたのだった。なんて節穴だ!
しっかりした構成でテーマを喉越しよく呑み込ませてくれて、ちゃんと面白くて風味に富んでいる。このガチンコの社会派エンターテインメント性は、BL界の赤石路代かと言いたくなるぞ。つねに新しい題材に取り組んでいるところも、作品の背後に知性と教養の厚みが感じられるところも、似ている気がする。
うわー、わたしこんなにいいものを持っていたんだな。なぜかこのタイミングで以前よりもっと好きになってしまった。

我ながらまぬけなことを言っている。たぶんそれは、今までちゃんと感想を書いていなかったから、しっかり作品に向き合っていなかったからだろうな。
というのも、わたしがドハマりしたのは『ふらちな刑事さん』を読んでからなんだけど、これがもうすごい難物なのだ。今回読み返しても、作中と読んでいる自分のなかに渦巻く感情を言語化できる気がしない。いや、超がんばればできるかもしれないけれど…大変そうで…。

てなわけで、こんなソウルフルでクレバーなすぐれた作家に対して怠惰すぎる読者であることを反省して、ちょっとでも何か書いてみたいなと思った。なので、かんたんな感想を12冊ぶんガガッと書いてみます。※紙派なので電子のみの作品は含まず
そこまで内容の奥底には触れないようにするし、ネタバレてもそんなに楽しみが損なわれない作品ばかりなので、どんなもんかなと思った方はぜひ以下も読んでみてください。
ではいくぜ!

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2021年冬アニメ

冬アニメ、いろいろ観ています。2期のものが多いね~
我が家のTVの調子がおかしくて、たまに録画失敗することもあってつらい。アマプラがあってよかった。あー、TV買い換えるのめんどいなぁ…。それはさておき。
おおむね楽しみな順に雑感を書いていきます。

SK∞ エスケーエイト
今クールでいっちばん楽しみなのはこれかな! 沖縄を舞台に、スケートボードの秘密レースにのめり込む男子高校生レキ&ランガのコンビと、彼らの前に立ちはだかる強敵の面々を描いた熱血群像劇。
スケボー経験者のレキが初心者のランガを導いたり教えたりしているのに、最初に名が売れてしまったのはランガ…というツイストのきいた導入がすでに面白い。ランガは勝負となるとほかの判断が停止するみたいなあやうさがあって、OPの演出も併せると、いずれレキとの離別イベントがあるんだろうなぁ…と予想される。
最近顔見世したラスボスがまたとんでもなかった。仮面にマタドール装束でスケボーを駆り、未成年たちにエロス&バイオレンスを叩きつけ、どうやら秘書ともただならぬ関係であるような、名家の御曹司かつアダルトチルドレンの国会議員CV子安武人…って、ヤバさの数え役満だな。アダムマジヤバいな。
レキははちゃめちゃに良いやつなので、ランガの凍りついた心の奥も、ド変態アダムのこじらせた心も、彼の太陽パワーで溶かしてくれるといいなーと思っている。ヒールは営業用のシャドウさん/ひろみちゃんは癒し枠!
しかしスケボーって痛そうな趣味ですね…ぼくにはとてもできない。

ワンダーエッグ・プライオリティ
野島伸司がアニメを手がけるぞー、ってことで観てみた。90年代には彼奴のドラマをいろいろ観てたなぁ。あいかわらずえげつない題材を美しく描いている。アクションシーンの多さやファンタジックな表現など、アニメにした意味もありありだ。
かけがえのない存在を喪った少女たちが、石化した友を助けるために異界での冒険に身を投じてゆく。彼女たちが異界で出会うのは、謎の卵から孵った見知らぬ少女たち。卵の少女たちは、どうやら現世ではすでに自殺している存在らしい。ポップな死霊たちから持物(アトリビュート)を授かってトラウマを退治して死霊たちを解放すると、友の石像にはわずかに温もりが戻る…。
といった感じの、女子高生地獄めぐりストーリーだ。
画面は溜息が出るほど美しいのに、そこで綴られる物語は死と性と血の臭いに満ちて鬱屈したものだ。2話めからはOPがついたんだけど、その楽曲がまさかの『巣立ちの歌』だったのはもうグエェェってなった。安定の悪趣味!
たぶんエンディングはすっきりしないしハッピーエンドでもないんだろうけど、それでも最後まで観ちゃうかな。
デカダンスで感情豊かにはっちゃけていた楠木ともりが寡黙でクールな美少女を演じていて、芸幅の広さにしびれる。彼女の芝居は好きだなー。

2.43 清陰高校男子バレー部
原作未履修。幼なじみの二人を軸に、福井の弱小男子バレー部が全国をめざす物語。
東京の強豪中学チームで深刻なトラブルの原因となった灰島公誓は、子供時代を過ごした福井に戻ってきて幼なじみの黒羽祐仁に再会する。素質はあるのに本番に弱いユニと、バレーバカゆえに周囲と衝突しつづけるチカは、中学最後の県大会で完全に決裂してしまう。同じ高校に進学した二人は、高校のバレー部でみたび出会い、あらためてチームメイトとなる。
優秀なプレイヤーが1、2人いたら、いくつか勝っただけでもう全国が見えてきたり。ぽんぽん勝つとたやすく士気が上がったり。全国手前まで行ったかと思ったら次なる舞台は学校の球技大会だったり。と、ふつうのスポ根ものにはそうそうない展開が、すっごくリアルで面白い呼吸だ。部活に打ち込みはじめた親戚かつ舎弟に嫉妬したヤンキーが足を引っ張ってきたりするのも、えもいわれぬリアリティ…。
とくにすばらしいのは、主将である小田のキャラだ。人間パラをバレーに全振りしているトラブルメーカーのチカを、バレー部にきちんと包摂しようとする統率力が天晴で、高校生とは思えぬ菩薩のような度量の広さ。このターンできっと人間を卒業できるぐらいじゃなかろうか。そんな小田を支える副主将、万能毒舌の鬼神・青木もまたカッコいい。
菩薩と鬼神と衆生たちの感情の煮凝りは、どんなふうに展開されてゆくのかな。楽しみだ。

ホリミヤ
原作未履修。なんとなく観てみたらかなり面白いな。ラブコメもののお約束をいちいちはずしてくる調子がすごく愉快で、毎回笑っている。宮村、なんでそのタイミングで言うのwww
クラスいち派手な女の子とクラスいち地味な男の子には、校外では秘密の姿があった…!ってワンアイディアから始まったんだろうけど、原作がかなり巻数を重ねてるってことは、いろんなキャラをすごく丁寧に育てたんだろうなぁと思う。原作もちょっと気になるなー。
いままで聴いた内山昂輝のなかで、もっともソフトで素直な役かもしれない。悪友に電話で「死ね!」と一言くらわせてブッチ切るさまも、ソフトではありませんでしたがとても良かった。

BEASTARS(第2期)
安定の2期。EDのメロウさエモさにのたうち回ってしまう。イブキイイイイイ
裏市を訪れたジュノがルイと踊るシーンがすてきでだなーと思ったら、ちゃんと原作にもあったんだった。照明と演出に色気があって、もっと印象ぶかくなってるな。そして、いろんなエピソードをかなりシャッフルして整理していることにも初めて気づいたのだった。ワーオ
ルイ先輩はあいかわらず最高にカッコいいですな!

アイ★チュウ
原作未履修。でもキャラはだいたい頭に入ってるので、厨二炸裂のエヴァ様が御年29歳だってこととかは知ってたりする。
勉強のために観てるけど、じわっと面白いな。人間関係の煮詰め方とか各人が抱える問題の展開とかの手際がかなりいいので、家人が「ふつうのアイドルアニメなら中盤でやるような展開を…!」と面白い驚き方をしてるのが面白いw

スケートリーディング☆スターズ
団体のスケート競技というオリジナル種目で展開する部活もの。ラスボスは白髪天才孤高の神谷浩史…ってだけでもう笑っちゃうね。主人公は傍若無人天衣無縫の内田雄馬、相棒はラスボスへの復讐心を主人公を使って果たそうとする策略家の古川慎。メイン二人がなかなかの暴れ馬なので、部活の先輩たちがちゃんとしてていい感じだ。むやみに搦め手からいきたがる流石井を制した4話での「正攻法」なんて、超カッコよかったな。ちゃんとしてる!ナイス常識的判断!
団体競技ものとしてはまあまあの滑り出しなんだけど、肝心の競技場面の作画にはちょっと不満が残る…。指先とかぜんぜんきれいじゃないんだもんなー。経過観察!

Dr.STONE(第2期)
初手からオリジナルの展開やエピソードをぽいぽい放り込んでくれて、再構成の気合が感じられる良い2期。船出の前までぐらい進むのかな? 千空は流血を厭い情に篤く人間性を信じる、ほんとうに良い子だね…!

怪物事変
原作未履修。地元でいじめられてる主人公の名前が「かばね」って聞いてひでえ!と思ったんだけど、「夏羽」と表記するのね。でもやっぱりひどい響きの名前だよね。織くんと晶ちゃんが良い子で救われるなー。いっぽう紺ちゃんは頭悪すぎて心配になる。そして、夏羽は人間1年生なのにいきなり理解しようとトライする概念が”恋愛”なのが、ハードル高すぎて笑った。

魔道祖師
原作未履修。友人の激推しなので観てる。が、ご新規をつかむ気ゼロな第1話でかなり振り落とされそうに…。なんとかがんばって視聴継続しています。背景超きれいだね。
たぶんこの作品は、テキストで読むのがいちばん自分に合うとは思う。原作の出版待ちかなー。
キャラの初出時の名前テロップをほぼ読めないんだけど、中国だから日本の1秒4文字とは基準が違うっぽいな。くやしい。

はたらく細胞!!(第2期)
変わらぬクオリティで安心。粛々と観てる。BLACKは気になりはするけど、なんとなくつらそうで観てないw

天地創造デザイン部
原作未履修。生き物ってあちらを立てればこちらが立たず…をどうにかやりくりした、なんともムチャな造りをしてるんだね。
生物についてのあれこれを眺めてるのはめっちゃ楽しい。でも、クライアント=神が適当なことばっか言うのは仕様だからしょうがないとしても、営業の彼がなにひとつ役に立ってないのがなんかしんどい。君、メール端末同然だぜ。あと、チーフデザイナーが過去の代表作を毎回ひっぱりだしてくる展開がお約束になってんのもしんどい。こんなチーフ、やじゃない…? 馬を見るとウッてなりそうだよw

約束のネバーランド(第2期)
なぜかアニメ2期はいまだにぴんときていない。こないだ原画展にまで行ったのになぁ(→感想はこちら)。しかしこの展開だと、2期ではユウゴ以下のGBメンは割愛だったりする? ってかGP篇もぶっとばしちゃったりするる? どうなるのかしらん。

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竜と祭礼(3)


竜と祭礼3 ―神の諸形態― (GA文庫)
(2020/9/11)
筑紫一明 (著), Enji (イラスト)
既刊3巻


冬、イクスは〈神の街〉と称されるエストーシャを作杖のために訪れる。魔法杖職人の始祖レドノフゆかりの地にして亡霊などの伝説も多く残る古都で、イクスは杖職人としてのありかたを模索しつづける。
同じとき、ノバと共に帰郷するはずだったユーイは、エストーシャで開催されるマレー教の神学会議に出席せざるをえなくなっていた。
杖を求めるイクスと神に招かれたユーイの運命は、星拝の祭で交錯することになる。


あとがきでは、「のんびりした物語」「ほのぼの緩く」などと言っていたな。あれは嘘だ。
雪と夜に包まれた読みごこちはたしかにしんしんとしずかだったけれど、シリーズ中最もビターな展開による最も殺傷力の高い読後感で死ぬかと思った。ひどい。
そのいっぽうでイクスにはとてもすばらしいイベントもあり…でもそれを機にとんでもない境地に至ってしまうことにもなり…ああ、なんかもう今回も絶句するしかないよ; こんなしずかな話なのに、いろんなことが起こるしすげえ情緒が乱れる。つ、つづきを…どうか少しでも光あるつづきをくれ…。

ではネタバレつつ語ります。

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竜と祭礼(2)


竜と祭礼2 ―伝承する魔女― (GA文庫)
(2020/5/14)
筑紫一明 (著), Enji (イラスト)
既刊3巻


魔法杖職人見習いのイクスは、姉弟子ラユマタの命令で、王都の防衛の綻びについて調べるためにレイレスト近郊の村ノーツウォルへ向かう。ラユマタが調査の助手として同行させたのは、以前縁ができた竜の杖の持ち主ユーイだった。収穫祭に湧く鄙びた農村ノーツウォルは、不老不死で人喰いの魔女が棲むという深い森を背後に擁していた…。

さらりとして沈着な語り口とビターな味わいで美しいテーマを扱う大好きなこの作品。ストーリーにもキャラにも類型的なところがまったくない、ほんとうにいまどき珍しい珠玉のようなラノベだ。

前巻(→感想はこちら)とおなじく、今巻でもイクスはひとつの課題を抱えて旅立つ。でも物語が進み、新たな謎がつぎつぎ浮かび上がって絡まってはほどかれるにつれて、最初の謎もほろほろと解体されてゆく。そして最後には、予想もしていなかったふしぎにひらけた場所に着地する。そんな独特な進行はものすごくクセになるのだ。ほんっと好きだなぁ、このシリーズ…。

平明なのに込み入っているプロットと大事なことほど行数を費やさない抑制的な文体があいまって、この作品の感想を書くのはいつも難しい。作風やキャラと同じく、読者も寡黙になってしまうようなしずかな圧がある。
でもやっぱり、どこがどう良かったのか、あのわかりにくいシーンにはどんな意味合いがあったのか、自分のためにも言語化して整理しておかなきゃなーと思うので、蛮勇ふるってなんとか書いてみたいな。

ではネタバレつつ語ります。

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約束のネバーランド展

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたしますー!

今年は遠出しなかったので、例年とはちょっと様子が違う年始でした。
てことで、今年最初のエントリはめずらしく展覧会感想です。我ながらびっくり。
人に誘われて行ってきたのは、『連載完結記念 約束のネバーランド展』です(→公式サイト)。このために本編を全巻ガッと読み返し(完結してから読み返したの初めて!)、副読本もガガッと読んで鼻息荒く六本木ヒルズに行ってきました。おりゃー

約ネバ展クローネ エントランス、東京タワーをバックにしたクローネ


おっと、展覧会感想の前に。わたしが読んだ副読本は、

英米文学者と読む『約束のネバーランド』 (集英社新書)
(2020/8/17)
戸田 慧 (著), 出水 ぽすか (イラスト), 白井 カイウ (原著)

これと

シークレットバイブル 約束のネバーランド 0 MYSTIC CODE (ジャンプコミックス)
(2020/12/4)
出水 ぽすか (著), 白井 カイウ (原著)

これです。

前者は、アメリカ文学の研究者が英米文学や宗教の引用や含意、それからジェンダー表現などを考察しながら『約ネバ』を読んだもの。たぶんラス前19巻の発売に合わせて突貫工事で作った本と思われ、内容はわりと広く浅くといった趣きでつるっつる読めます。でも、こういった知識を援用するとこの描写はこういう構造にも読めるよね、という〈ちゃんとした文学研究〉の姿勢は気持ちよく、中高生ぐらいの年若い読者にぜひ読んでほしい本だなぁと思いました。
わたしは『ピーター・パン』についてほとんど何も知らないので、こうした本で腑分けしてくれるのはありがたかった。

後者は公式ファンブック。目が眩むほどの細かい字で、テキスト量がハンパない。内容は「読むオーディオコメンタリー」みたいな感じで、全巻を読み返しながら白井カイウと担当編集氏が設定や苦労や裏話を語りつのっています。めちゃくちゃに情報が多い…! この本編集&校閲するの大変だっただろうなぁ…。上記の本のジェンダー分析を読んだあとに、こちらでエマのキャラ立てについての会話を読むのはなかなか味わいぶかかった。


てな感じで予習と下ごしらえをして、展示を観てきました。会場の設計はこんな感じです。

 エントランスエリア
 展示エリアI GFハウスからの脱出
 展示エリアII ソンジュとムジカ
 展示エリアIII B06-32シェルター
 展示エリアIV ゴールディ・ポンド
 展示エリアV 七つの壁を求めて
 展示エリアVI 『約束のネバーランド』ができるまで
 展示エリアVII それぞれの決意
 展示エリアVIII 新しい世界へ


物語の流れに沿って抜粋したページをB4にプリントし、白井カイウと出水ぽすかのコメントがたまに添えられているのがメイン。それに加えて、パイロット版のネーム、初期設定のラフやネーム、各種設定と創作メモが公開され、それから描き下ろしの後日譚19ページが展示されていました。あ、あとパネル展示とか鬼の面の立体物とかもあったな。

約ネバ展鬼 エントランスの立体パネル鬼

出水ぽすかの、巧くて緻密でスピード感にあふれたタッチの画面を原寸で観ることができたのはうれしかったです。
じっくり観ていると、じっさいにペンが紙のうえを走った痕跡が感じられてなりません。そのいっぽうでCG処理されているところも多い。どうやって描いてるんだろ。基本は紙に描いて、PCで調整してるのかな?と首をひねりながら観ていましたが、メイキングパートで仕事の進行が解説されているところがあり、だいたいそれで正解だったとわかりました。主線が紙で、スキャンしてPCで仕上げてるらしい。
展覧会メインビジュアルを仕上げるタイムラプスも流れていましたが、観てても何が起きてるのかさっぱりわからなかったw これが、こうなって、こう……じゃ!??? みたいな。

公式サイトを見れば少し雰囲気がわかるけれど、各エリアはそれぞれのイメージに合った空間デザインになっています。で、原画は白いパネルだけでなく、エリアごとに特徴的な媒体にもプリントされているのがすばらしい。
「ソンジュとムジカ」では和紙のような繊維の毛足が長い紙に。「B06-32シェルター」ではエイジングを施したアルミ板に。「ゴールディ・ポンド」では古新聞を思わせる端がギザギザした粗い紙に。どれもこれもカッコいい! 印刷技術スゲー!
現代ではデータ入稿が一般化して、マテリアルとしての原画が存在しないことが多くなっています。そんな時代に開催する「原画展」の、ひとつの到達点というか模範解答のような、そんな気合を感じた展示…だったのですが…それでも、観終わったわたしはなにやら不満足感を抱えていたのですよねー。

なんでだろ?とつらつら考えるに、やっぱり「原画がない」というシンプルかつ詮ない事実に尽きるのかなぁと。筆圧やタッチや筆の速さ、修正跡、トーン処理、各種指定の水色/黄色鉛筆、写植シール、日付入りの校了印…などなど、マジの原画って情報量がはちゃめちゃに多いのですよね。そうしたものを観るのはすごく面白いのに、綺麗な版下を綺麗にプリントした(だけの)ものはやっぱり根本的に食い足りないところがあるのかもしれない。
なおかつ、今気づいたんだけど、わたしはたぶん「原画展」ではなく「展覧会」を観たかったんじゃないかな。ある芸術作品/作家をとりあげて、その文化的・社会的文脈などをあきらかにしようとする、学芸員の編集意図がはたらいたひとまとまりの展示が観たかったんだと思う。そうした営為を振り返れるように、テキストを増量してパッケージ化したカタログもやっぱり欲しくなる。
んでもそれはやっぱり、作家はバリバリ存命でつい最近完結したばかりのホカホカの人気作に求めることじゃないよね。これはみどもが誤りじゃ。

先述のように展示はすごく凝ってハイクオリティだったし、「あの方」にも会えたし、入魂の描き下ろし後日譚でレイのあんな顔も見れちゃったし、落ち着いて振り返れば充分に盛りだくさんでした。ウム。
1/11までの開催で、3月からは大阪に巡回するそうです。約ネバファンの方はぜひ。

約ネバ展あの方 なにが のぞみ?

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